初稿:2022/12/05 00:10 - 最終更新:2023/02/04
前回はVOICEVOXとREAPERで音声合成を簡単に行う方法を紹介しましたが、今回は類似の音声合成ソフトであるVOICEPEAKをREAPER上で簡単に使う方法を紹介します。
- VOICEPEAKとは
- PeloReaper ExtensionのVOICEPEAK Integrationについて
- 環境構築方法
- REAPER上で音声合成を行う
- CSVファイルを使って沢山のセリフを一括音声合成
- セリフTrackを用いたセリフ作成と音声合成の効率化
- 音声の調整について
- おまけ:動画に字幕・テロップを簡単に付ける
- 最後に
VOICEPEAKとは

VOICEPEAKはDreamtonics社の開発した最新のAI音声合成技術syllaflowを搭載し、手軽に読み上げさせることが可能な入力文字読み上げソフトです。ただしこのソフトはフリーソフトではなく、販売されている商品となりますので、ご利用になる場合は別途購入する必要があります。
PeloReaper ExtensionのVOICEPEAK Integrationについて
VOICEPEAK v1.1.0ベータ版からは、VOICEPEAKのエディタだけでなく、コマンドラインでの実行もサポートしました。PeloReaperにはそれを応用したVOICEPEAK Integration機能が実装されています。
逆にこのv1.1.0ベータ版より前のバージョンや体験版などを用いても正しく動作しませんので、PeloReaperの機能を用いるには、VOICEPEAKの製品版の購入が必須となる点にご注意下さい。また、ベータ版については、製品購入後AHSのユーザー登録を経て、ユーザーのダウンロードページにてダウンロードが可能となっています。
環境構築方法
PeloReaper Extension for REAPERをインストール
以下の記事を参考に、PeloReaper Extension for REAPERを事前にインストールしておいて下さい。
VOICEPEAKのインストール
VOICEPEAKを購入後、インストーラーで普通にインストールを行って下さい。一旦VOICEPEAKを起動して、VOICEPEAKエディタ上で普通に音声合成が出来るかどうかチェックして下さい。
↑ 普通に文章の読み上げが出来ていればOK
PeloReaperのVOICEPEAK環境設定
REAPER上で以下のActionを実行して、環境設定のウィンドウを表示します。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Show VOICEPEAK settings window...
ウィンドウ上の[voicepeak.exe Path]というテキストボックスに、インストールしたvoicepeak.exeの場所を設定します。
↑ 自分でインストールした場所を設定する
あとは[Save and rebuild cache]ボタンを押せば完了です。この時、VOICEPEAKを今後実行するのを高速化するためのキャッシュ情報が構築されます(進捗が分かるウィンドウが表示されます)。環境によりますが、数秒~数十秒程度で終わるのでしばらくお待ちください。
また、今後AHSからVOICEPEAK製品が登場する予定になっているようですが、新製品をインストールした場合もこのキャッシュ構築が再度必要になりますので、覚えておきましょう。
これで環境構築は完了です。
REAPER上で音声合成を行う
REAPERで以下のActionを実行します。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Generate dialogue with VOICEPEAK TTS...
TTS設定のウィンドウが表示されますので、ナレーターを選択してテキストを入力し、[Generate]ボタンをクリックすれば音声合成が実行されます。

Emotionsグループでは感情パラメータ、Optionsグループでは話す速度やピッチの調整が可能です。速度やピッチの値の範囲については、数値入力のボックスにマウスカーソルを重ねるとヒントが表示されます。

ちなみに上記ダイアログのテキストボックスは複数行入力できるようになっており、行を分けるとそれぞれが1つのwavファイルとして生成されるようになっています。
↓ 実行例
CSVファイルを使って沢山のセリフを一括音声合成
セリフが沢山あるという場合、一括で音声合成を実行できると便利なので、CSVファイルでの一括音声合成機能も実装しました。行ごとにナレーターや配置時刻も指定可能です。
CSVファイルを用意して音声合成を実行
CSVファイルの仕様はPeloReaperのマニュアルPDFに記載されているのでそちらに譲るとして、CSVの行ごとに、以下のような情報を用意します。
- ナレーター名
ナレーター(話者)の名前を指定します(例:Female 1)。 - セリフテキスト
音声合成されるセリフのテキスト - 配置時刻(省略可能)
秒もしくはタイムコード(HH:MM:SS:FF)で指定
他にも感情設定など細かく設定は可能ですが、そのあたりはPeloReaperのマニュアルをご覧下さい。PeloRaperのマニュアルは以下のActionで表示することができます。
[PeloReaper] Misc: Open PeloReaper document (ExtensionGuide: Japanese/English)

Excelだと最低限で上図のような感じに記入してから、CSVファイルとしてファイルに保存します(Excelメニューの「ファイル>名前を付けて保存>CSV(コンマ区切り)で保存)。

↑ 書き出したCSVファイル
1行ごとに最低限2つのフィールド(ナレーター名、テキスト)は必須ですが、それ以降の項目は任意です。CSVの行の先頭にシャープ(#)を記入すると、その行はスキップされます。
CSVファイルを用意出来たら、以下のActionでそのCSVファイルを選択すれば、一括で音声合成が行われてwavファイルが自動的にREAPERにインポートされます。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Generate dialogue with VOICEPEAK TTS (CVS: ShiftJIS)...
ナレーター名について
ナレーター名は以下のActionを実行してCSVファイルに情報をかき出すことで、確認することが可能です。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Save VOICEPEAK narrator infos to csv file...

↑ ナレーター名と利用できる感情パラメータ一覧
セリフTrackを用いたセリフ作成と音声合成の効率化
セリフTrackとEmpty Itemを用いることで、台本作成やセリフの配置作業を効率的に行う仕組みを実装しましたので、それについて説明します。
Empty Itemについて
REAPERのItemにはメモ書き(Item Notes)を設定出来ますが、Empty Itemを用いるとItem上にそのメモ書きを表示してくれるという便利な機能があります。セリフをEmpty Itemで配置して、それらを一括で音声合成することも可能です。
ちなみにEmpty Itemは何かTrackを選択し(配置先)、時間選択範囲を指定して、
Insert empty item
というActionを実行すれば作成できます。このEmpty Itemをダブルクリックするとメモ書き(Item Notes)を記入するダイアログが出ますので、そこでセリフを設定します。

セリフTrackの作成
Empty Itemを配置したTrackの名前にナレーター名を記載することで、このTrackがセリフTrackになります(後でこの名前は音声合成などに用いられます)。
PeloReaper v2023.02.03以降では、選択したTrackにNarrator名をGUIで選択して設定するActionを追加してありますので、簡単にセリフTrackのセットアップが行えるようになりました。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Set VOICEPEAK narrator name to selected tracks...

セリフ用Empty ItemをGUIで編集
Itemを一つ選択して以下のActionを実行すると、そのItemのItem NotesをGUIで編集出来ます。また、Narrator名もこのItemのあるTrackのTrack名に設定されます。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Edit item notes and select narrator(track name) with dialog...

選択したセリフ入りEmpty Itemから音声合成
セリフTrack上にある、セリフを記入したEmpty Itemたちを選択状態にして、以下のActionを実行すれば即座に音声合成を行うことが出来ます。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Generate dialogue from selected item notes with VOICEPEAK TTS
↓ 実行例(クリックで拡大)

セリフTrackのCSVエクスポート・インポート
セリフTrackを選択して以下のActionを実行することで、選択したセリフTrackの情報をCSVファイルに書き出すことが出来ます。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Save selected dialogue tracks to csv file...
逆に以下のActionでCSVをインポートすることも可能です。
[PeloReaper] VOICEPEAK: Create dialogue empty items from csv file (CSV: UTF8/ShiftJIS)...
これらのActionを使うことでセリフTrackの情報を読み書き出来るので、セリフの台本をREAPER上で作ったり、CSVをExcelで編集することで作ったりと、方法を自由に選択出来るようになっています。
音声の調整について
音声の細かい調整についてはREAPER上で出来ませんが、今のところ以下のような使い方を想定しています。
- 音声合成を実際にやってみて、読み方がそもそもおかしいとかイントネーションがおかしいといった場合は、VOICEPEAKエディタのユーザー辞書管理機能(ウィンドウ上部の本のようなアイコン)で調整する(大抵の他のTTSソフトでもこの辞書育成が肝になっているので、慣れている人にとってはお馴染みかと思います)。
- どうしても細かい発音調整が必要なセリフに関してのみ、VOICEPEAK Editorでセリフ入力&調整してwavを書き出し、手動でREAPERにインポートする。
そのうちもうちょっと良いワークフローが思いつくかもしれませんが、現状での筆者の利用方法想定は上記のような感じです。
おまけ:動画に字幕・テロップを簡単に付ける
VOICEPEAKで声をあてて何かの簡単な解説動画を作るような場合、更に手っ取り早く字幕を付けたいと思うことも多いでしょう。それをサポートする機能がPeloReaperにありますので、こちらの記事もどうぞ。
最後に
VOICEVOXの場合と同様、REAPER上でサクっとVOICEPEAKを呼び出せたら作業が楽になりそうだったので、今回の機能を実装してみました。Action名などもVOICEVOXのものとほぼ同じようなものにしてあります。
VOICEPEAKの製品購入が必要な点は若干敷居が高いかもしれませんが、興味のある人に使ってもらえたら嬉しいです。