2021/05

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REAPERのTrack間ルーティングとサイドチェインの基本 (2)

前回はREAPERのTrackにおける信号の流れについて基本的なことを解説し、Track間でのセンド設定に触れました。今回は他のTrackから受け取った音声信号をコンプレッサーのサイドチェイン用の入力に繋いだりといった設定方法を見ていきます。


ReaCompを用いたサイドチェイン設定

以下の手順でサイドチェインコンプのセットアップを行っていきます。

  1. Trackを2つ作成(A:コンプを設定するTrack、B:サイドチェイン用の信号をAに送るTrack)
  2. Track B→Aに [Route] ボタンドラッグし、BのAudio 1/2チャンネルをAのAudio 3/4チャンネルにセンド
  3. AのFXにReaCompをインサートし、FXへの入力信号マトリックスを設定
  4. AのReaCompで [Detector Input] を [Auxiliary Input L+R] にする
  5. あとは再生するとBの信号がReaCompに入ってくるのでコンプレッションの設定を行う

Track(A, B)を作成してセンド設定

TrackSend34_01

Trackを2つ作成したら、Track Bの[Route]ボタンを左ドラッグでTrack Aにドロップしてセンド設定ウィンドウを表示します。デフォルトでは受け取り側のTrackに2チャンネルしかないので、Audioの送り先は [ (new channels on receiving track>3/4) ] を選んで、Track Aの3/4チャンネルを作成しそこにセンドするようにします。


FX入出力チャンネルマトリックスの設定

Track AのFXにReaCompをインサートします。FXの画面が表示されたら、画面右上にある [4 in 2 out] というボタンをクリックすると、入力チャンネルマトリックスが表示されます。

FXChMatrix01

ReaCompは4チャンネルにして1/2(L/R)チャンネルを通常入力、3/4チャンネルをサイドチェインなどのAUX入力として使う仕様となっているので、今回の手順であれば既に4チャンネルが適切にマトリックス設定された状態になっていると思います。なのでとくにいじる必要はありません。

チャンネルマトリックスは左側のグリッドが入力チャンネルのマッピング、右側のグリッドが出力チャンネルのマッピングになっています。一見迫力はありますが簡単な仕組みです。

入力マッピングはグリッド左側から入ってきた入力信号が、プラグイン側のどのチャンネルに入力されるかを設定します。出力マッピングではグリッド上側がプラグイン出力チャンネルに対応しており、それをグリッド右側のどのTrackチャンネルに出力するかの設定となります。

FXChMatrix02
上図ではチェックした場所と信号の流れのイメージを掴むため、一部のチャンネルのみ黄色矢印で記載しています(煩雑になるため一部だけ。チェックされた部分は全部同じような感じで信号が流れます)。

シンプルなコンプのプラグインであればチャンネルマトリックスをいじる必要はないかもしれませんが、より複雑でプラグインの入出力を多数持つプラグイン(Melda ProductionのMXXXなど)を利用する場合は、自分でどのチャンネルをどこに流すかの設定が必要になります。


ReaComp側でDetector入力をサイドチェイン側(AUX)に設定

ReaCompでどの信号の大きさをもとにコンプレッションを行うのか、を切り替えるのが [Detector Input] の設定です。

デフォルトでは [Main Input L+R] になっていますが、これを [Auxiliary Input L+R] としてやることで、3/4チャンネルからReaCompのAUXに入力された信号をコンプレッション用の入力として使うように切り替わります。

ReaCompDetectorInput01

ReaCompのDetector信号調整

ReaCompをサイドチェインで使うかどうかに関わらずなのですが、Detector信号の調整を [Detector Input] より下にあるパラメータで調整出来て便利です。

ReaCompDetectorAdjust01
  • Lowpass, Highpass
    Detector信号にLowpass/Highpass Filterをかけて削ることが出来ます(Cutoff周波数のみ調整可)。例えばサイドチェインでドラムの音が送られてきた場合に、キックなどの低音のみに反応させたい場合はLowpassの周波数をぐっと下げてやるといった使い方が出来ます。
  • RMS size
    Detector信号のRMSを計算する際の窓サイズ(ミリ秒単位)です。よく分からなければいじる必要はありません。
  • Preview filter
    チェックをONにするとDetector Inputの信号を音声として聞くことが出来ます。Detector Inputの信号調整用のリスニング機能です。

これでサイドチェインコンプとしてのセットアップは完了しましたので、あとは音声をどう圧縮するかの設定をReaCompで行えばOKです。

ReaCompSC01
↑ 再生中の例


サイドチェインの設定を解説してみましたが、いかがでしたでしょうか? チャンネルマトリックス等ややこしそうなものも出てきましたが、Effect系かInstrument系かを問わずオーディオプラグインの入出力設定は同じ仕組みになっています。一度覚えてしまえばそれ以降困ることはなくなりますので、是非チャレンジしてみて下さい。

REAPERのTrack間ルーティングとサイドチェインの基本 (1)

ReaperTracks01

REAPERのTrack間およびTrack内でのシグナルルーティングはガッツリ手動で設定が出来るため、非常に柔軟性が高いです。ルーティングの仕組みをしっかり理解すればするほど、自分の思い描いた信号処理が可能になります。

今回はルーティングの最も基本となる基礎知識と設定方法の解説を行い、次回ではFX(プラグイン)側での受け取り方の例としてReaCompを使ったサイドチェインコンプレッションのセットアップ方法を説明していきます。


Trackで扱う信号に関する基本事項

扱える信号の種類、チャンネル

REAPERではTrackでオーディオとMIDI両方の信号を一緒に流すことが出来ます。最初は意味がよく分からないかもしれませんが、「へー、特に区別がないんだな」くらいに認識しておけばOKです。

ちなみにオーディオは1Trackあたり内部に64チャンネルまで持つことが出来、自由に信号を流すことが出来ます。これは「最終的なオーディオデバイス出力のチャンネル数とは関係なくTrackで多数のチャンネルを保持できる」というもので、これら全チャンネルが音声デバイス出力に出力されるかというとそうではありません。例えば出力デバイスが2チャンネルまでしかなければ、それより多いチャンネル数のTrackを作っても3チャンネル目以降はヘッドホンなどに音声出力されることはありません。

では(上記の例でいうと)3チャンネル目以降は意味がないのかというとそうではなく、様々な信号処理を行うのに利用出来ます。他のTrackから音声を受け取ってサイドチェインコンプをかける、というのはその手法の一つです。

TrackChannels01_2

Trackまわりの基本的な信号の流れ

Trackは一見ただ並んでいるだけという感じに見えますが、実際には簡単な階層構造になっており、Trackの親子関係が存在します。MasterTrackが全てのTrackの親になっていて、それ以外のTrackを普通に並べただけであればそれらは全てMaster直下の子Trackたちであるということになります。

TrackSendMaster01

音声信号などはデフォルトで全てTrackから親Trackへと自然に流れていき、最終的にMasterTrackでまとめられたものが音声デバイス(スピーカーなど)に出力されるという流れになります。

更にTrackはフォルダを組んで更に階層を深くしていくことが出来、深いツリー構造を形成することも可能になっています。慣れると直感的に音声信号を束ねたり出来て便利ですが、詳細はまた別の機会に。

説明が難しく感じたかもしれませんが、Trackの信号が子供から親に流れる、ということだけは押さえておきましょう。


Track間でのシグナルルーティング

上記で説明した子Track→親Trackの流れとは別に、任意のTrackにも音声を同時に流したいという場合はTrackからTrackへ音声をセンド(送る)することが出来ます。

各種信号を別のTrackへセンド

あるTrackから別のTrackへ信号をセンドするのは簡単で、Trackのパネル状にある [Route] ボタンをマウス左ボタンのドラッグで送りたいTrack上にドロップするだけです。

TrackSend07

そうするとセンドの設定ウィンドウが出てきて、送信元のどのチャンネルを送信先のどのチャンネルに送るかといったことを設定出来ます。このウィンドウはウィンドウ外の場所をクリックするとすぐ消えてしまいますが、送信元の [Route] ボタンをクリックすればセンド設定のところでいつでも設定をやり直したり、センド設定を解除([Delete]ボタン)することが出来ます。

TrackSendSettings01

細かいところですが、センド設定を行うとTrackの [Route] ボタンの模様が変化し、Send/Receive/ParentSend などの設定状態が簡易的ですが確認できるようになっています。

TrackSendRouteBtn01

親Trackへの信号送信設定

既にTrackは自然と親Trackへ信号を送るといった説明をしましたが、親に信号を送らないといった設定も出来ます。

[Route] ボタンをクリックして出てくる設定ウィンドウの左上に [Master send] というチェックボックスがあり(自分でTrackフォルダ階層を作った場合は [Parent send])、これのチェックを外すと親に信号を送らなくなります。他のTrackにセンドもしていなければMasterTrackへこのTrackの信号が到達することはなくなり、音声出力から音が出ることもなくなります。

TrackSendParent01

普段このチェックボックスをOFFにする機会は少ないかもしれませんが、例えばサイドチェイン専用の音声信号を作ってその音声自体は鳴らしたくない、などといった場合にOFFにすることになるかと思います。



今回はTrack周りに関するシグナルルーティングについて最低限知っておくべき部分に触れたので、次回はサイドチェインコンプのセットアップに進みます。


Metadataも引き継げるようになったREAPERのBatchConverter

REAPERには「Batch File/Item Converter(以下Batch Converter)」というツールが付属しており、音声ファイルのコンバート(.wav→.mp3など)を簡単に行えるようになっています。

BatchConv01

基本的な使い方

Batch ConverterはREAPERのメニューから [File>Batch Item/File Converter] で起動できます。

コンバートしたいファイル・Itemをリストへ登録

wavファイルなどをコンバート指定場合は、WindowsのExplorerからファイルをリストにドロップするだけでコンバート予定の一覧に登録されます。

REAPERのアレンジビュー上で選択したItemを登録することも出来ます。この場合はItemを選択後、リストの下にある [Add...] ボタンをクリックし、出てきたコンテキストメニューから [Add selected media item(s)] を選べば一覧に登録されます。

ただしItemをコンバートする場合は、Itemの範囲で区切られた部分がItemのTake FXも適用された状態でコンバートされるようです。この際Itemが所属するTrackのTrack FXは適用されないようなので、レンダリングの替わりとして使いたいといった場合は注意が必要かもしれません。


出力先の指定

Outputグループのところで出力先フォルダやファイル名の設定を行います。

BC_OutputGrp
  • Directory
    出力先フォルダ指定(指定フォルダが存在しない場合は自動的に作成されます)
  • Use source file directory
    コンバート元のファイルと同じ場所に書き出したい場合にチェックを入れます
  • File name
    ファイル名をカスタマイズしたい場合はここで指定できます。通常はデフォルトの
    $source
    のままで問題ないでしょう(元のファイル名と同じ、という意味)。$で始まる文字列はワイルドカードというもので、コンバート時にDAW上の情報などに置き換えられます。

オプション設定

リサンプリングやコンバート時にかける追加のエフェクト、Metadataなどの設定が行えます。特に何かを変えたいということがなければ、デフォルトのままで問題ないかと。

BC_Options
  • Use FX / FX chain...
    コンバート時にエフェクトも一緒にかけてしまいたい場合、これにチェックを入れて [FX chain...] ボタンでエフェクトを設定します。
  • Tail size (ms)
    FXを挿入する場合に、もとの音声の最後からもう少し長くした状態でコンバートするのに使用します。これはDelayやReverbなどのTailも含めたいという場合に便利な機能です。
  • New metadata... / Add new metadata
    Metadataを新しく追加する場合に使用します。
  • Preserve original file metadata if possible
    コンバート元ファイルにMetadataが含まれる場合、コンバート後のフォーマットで受け取れるような情報であれば出来るだけMetadataを維持できるようにコピーしてくれる機能です。効果音ライブラリなどでwavファイルに含まれるタグなどを可能な限り引き継いでくれるようです。
    BC_PreserveMetadata01
    ↑ Flacのコメント情報にタグが移行された例

出力フォーマット設定

Output format 以降の設定はどのようなファイルフォーマットにコンバートするかの指定です。ここは指定したいフォーマット毎に設定が異なるので、各種フォーマットの詳細情報を調べてみて下さい。

BC_OutFormat01

あとはBatch Converterウィンドウ右下の [Start Convert] でリストに登録されたファイル一覧が全てコンバートされます。


コンバート設定のプリセット

コンバート設定をプリセットに保存して後から呼び出すことが出来ます。コンバートするファイル一覧の右下に [Presets] というボタンがあり、クリックするとコンテキストメニューが表示されるので [Save preset...] を選ぶと名前を付けて保存できます。

BC_Preset01

プリセットを呼び出す場合は上記のボタンをクリックすると保存したプリセットが並んでいるのでそれを選ぶだけです。

コンテキストメニューの[Delete preset]から指定のプリセットを削除することも可能です。



比較的最近のアップデートでコンバート時にMetadataも引き継げるようになり、筆者はwavファイルをflacにコンバートするといった用途で利用する機会が格段に増えました。以前はwavのメタデータをflacにコピーするのにkid3(CUI版)などのツールを駆使するしかなく、そっちのワークフローを整えてバッチ処理するといったことをやっていたのですが、REAPERのBatch Converterが改良されたおかげで楽になりましたね。

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